はじめに:憧れの料理人!その世界の扉を一緒に開けてみませんか?
テレビやSNSで見る、華麗な手つきで美味しい料理を生み出すシェフの姿。白いコックコートは輝いて見え、「自分もいつかあんな風になりたい!」と胸を熱くしたことがあるかもしれませんね。料理人とは、人を笑顔にできる、本当に夢のある素敵な仕事です。
しかし、その世界の第一歩を踏み出す前に、知っておきたいことがたくさんあります。
「料理人にはどんなキャリアの道があるの?」 「お給料はどのくらいもらえるんだろう?」 「見習いの頃から、どんな風に成長していくの?」
この【第1章】では、そんな料理人という仕事の「基本」に焦点を当てます。キャリアの歩み方から、気になる年収のリアルな話まで、あなたの夢への第一歩となる「基礎知識」を詳しく解説していきます。
さあ、一緒に料理人の世界の扉を開けてみましょう。
まずは知っておきましょう!料理人という仕事のリアル
料理人への道は一本ではありません!あなただけのキャリアマップを描きましょう
料理人になるための道は、実は一つではありません。まるで冒険の旅の始まりに、どの職業を選ぶか決めるかのように、あなたの選択次第で未来は大きく変わっていきます。どのような道があるのか、一緒に見ていきましょう。
王道ルート!下積みから頂点を目指す「レベルアップ」の物語
昔ながらのレストランやホテルの厨房は、まるでロールプレイングゲームのレベルアップのように、はっきりとした階級がある世界です 。
その冒険は、一番下のポジション、「追い回し」から始まります。追い回しは、厨房の掃除や皿洗い、先輩たちの手伝いなど、あらゆる雑用をこなす見習い中の見習いです。しかし、ここでの経験が、すべての土台になるのです。
日本のホテルの和食厨房を例に見てみると、このようにステップアップしていきます 。
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一般スタッフ(追い回し):まずはここで、料理の基本を徹底的に学びます。知識と技術の基礎体力をつける大切な時期です。
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セクションリーダー(リーダー):焼き場、揚げ場、刺し場のように、それぞれの専門コーナーの責任者になります。メニューを考えたり、後輩をまとめたり、少しずつリーダーとしての経験を積んでいきます。
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副料理長(スーシェフ):料理長の右腕となる、非常に重要なポジションです。いくつものコーナーをまとめて、後輩の指導や、材料費の計算(コスト管理)、新しいメニュー開発まで、厨房の運営のほとんどに関わることになります。
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料理長(シェフ):ついに厨房のトップです。調理部門の最高責任者として、厨房のすべてを取り仕切る存在です。
この道のりは、決して短くありません。一人前の料理人になるには、だいたい10年はかかると言われています 。この長い「修業」の時間が、料理人というキャリアの難しさの一つでもあるのです 。
どこで働く?大手チェーン、ホテル、個人店、それぞれの冒険の違い
最初にどこで働き始めるかは、あなたの未来を左右する、非常に大事な決断です。大手チェーン、ホテル、そして個人が経営する小さなレストランでは、学べることやその後の道が全く違うからです。
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大手チェーン・ホテル:大きな会社が運営しているレストランやホテルは、まるでしっかりしたカリキュラムのある学校のようです 。研修制度が充実しており、「これをクリアすれば昇進できる」というルールもはっきりしています。一般のスタッフから始まって、店長、いくつかの店をまとめるエリアマネージャー、さらにはホテル全体のレストラン部門のトップまで、会社の中で昇進していく道があります 。安定したお給料や福利厚生(会社が提供するボーナスや手当のこと)を求めるなら、魅力的な選択肢かもしれません 。
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個人経営のレストラン(個人店):有名なシェフが一人で経営しているような小さなお店では、他では学べないような特別な技術や、オーナーシェフから直接、お店の経営の秘密を教えてもらえるチャンスがあります 。将来、自分のお店を持ちたいという夢があるなら、これ以上ない最高の修行場所と言えるでしょう。ただし、お店が小さい分、料理長や店長といったポジションは一つしかないため、出世のためには他のお店に移る(転職する)必要が出てくることが多いです 。
この選択は、単なる好みの問題ではありません。あなたがどのような料理人になりたいか、その根本を決める分かれ道なのです。チェーン店で働くことは、多くの人をまとめる力や、決められたルールの中で最高のパフォーマンスを出す方法を学ぶ道です。個人店で働くことは、一人の師匠の技をじっくりと盗み、いつか自分の力で独立するための道です。最初の職場選びが、あなたの10年後、20年後の姿を決めるのです。
レストランだけじゃない!料理スキルで活躍できる意外な場所
最近は、料理人の活躍の場所はレストランの厨房だけにとどまらなくなっています。高いスキルを持つ料理人には、もっと色々な道が開かれているのです。
例えば、食品メーカーで新しいお菓子や冷凍食品を開発したり、経営がうまくいっていないレストランにアドバイスをするコンサルタントになったり、料理専門学校の先生になる道もあります 。フリーランス(会社に所属せず、自分の力で仕事をする人)になって、雑誌の料理ページを作るフードコーディネーターや、料理教室の先生、さらにはSNSで自分の料理を発信して有名になる、といった道もあります 。こうした仕事は、レストランのように立ちっぱなしではなかったり、お休みが取りやすかったりするため、年齢を重ねても長く続けやすいというメリットもあります 。
これは、料理人の働き方が、一つの仕事だけでなく、色々な仕事を組み合わせる「ポートフォリオキャリア」に変わってきている証拠です。レストランで働きながら、テレビに出演したり、コンビニの新商品を考えたり、YouTubeで自分のチャンネルを持ったりすることもあります。収入源を増やすことで、一つの会社に依存しなくても生きていけますし、業界の景気が悪くなっても安心なのです。
お金の話、ぶっちゃけます!料理人のリアルな年収
「料理人は、どのくらいお給料をもらえるのですか?」みなさんが一番気になるところかもしれません。正直に申しますと、その現実は、みなさんが想像しているより少し厳しいかもしれません。しかし、やり方次第では、夢のある金額を稼ぐことも可能なのです。
見習いからベテランまで、お給料はどう変わる?
まず、見習いの料理人として働き始めた時の初任給は、年収で300万円程度からスタートすることが多いです 。これは、月々のお給料にすると20万円ちょっとくらいになります。
お給料は、年齢を重ねて経験を積むごとに、少しずつ上がっていきます。
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年齢で見ると:55歳から59歳くらいが最も高く、平均で約404万円です 。
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経験年数で見ると:経験ゼロの人の平均年収が約264万円なのに対して、15年以上働いているベテランでも、平均は約333万円です 。
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役職で見ると:料理長や店長のような管理職になるとお給料は上がりますが、他の仕事と比べると、その上がり幅はそれほど大きくないかもしれません。係長クラスで平均412万円、課長クラスで539万円、部長クラスで650万円くらいです 。
この数字を見て、どう思われましたか?「思ったより少ないかも…」と感じたかもしれません。そうなのです。日本のお店で従業員として働き続けるだけだと、お給料はある程度のところで頭打ちになってしまうことが多いのです。15年も頑張ったベテランの平均年収が333万円という現実は、多くの料理人が「自分のお店を持つ」とか「海外で働く」といった、リスクは高いですが成功すれば大きく稼げる道を選ぶ理由にもなっています。
何料理?どこで働く?で給料が変わるって本当ですか?
お給料を大きく左右するのが、作る料理のジャンルと、働く場所です。
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料理のジャンル:最もお給料が高いのは、高級なお店が多いフランス料理のシェフで、平均年収は約470万〜550万円です。その次に、中華・西洋料理(約330万〜350万円)、和食(約320万〜360万円)と続きます 。これは、料理が難しいからというより、フランス料理の高級レストランのように、お客さんが支払う料金が高いお店は、料理人にもたくさんお給料を支払える、という仕組みなのです。
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働く場所:やはり、東京のような大都市で働くと、お給料はぐんと上がります。全国の料理人の平均年収が約408万円であるのに対し、東京の平均は約490万円と、かなり高い水準です 。
つまり、あなたの料理の腕だけでなく、その腕を「どこで披露するか」が、お給料を決める大きなカギになるということです。高く評価してくれる場所(高級なジャンルや、人がたくさん集まる都会)を戦略的に選ぶことが、収入アップの秘訣なのです。
夢の海外!年収1000万円も?でも、気をつけておきたいこと
海外で働くことは、お給料を飛躍的にアップさせる大きなチャンスです。特に和食は世界中で大人気ですから、日本の料理人は引く手あまたなのです。
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アメリカ:若い料理人でも年収600万〜900万円が期待でき、料理長クラスになれば1000万〜2000万円も夢ではありません 。
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その他の国:イギリスやシンガポール、香港でも、若いうちから450万〜900万円、料理長になれば750万〜1200万円程度稼げるのが一般的です 。
ただし、注意点が一つあります。こうした国は、お給料が高い分、生活費、特に家賃が非常に高いのです。例えばアメリカですと、一人暮らしのアパートでも家賃が月に20万円以上することも珍しくありません 。
年収1000万円超えのスゴ腕料理人とはどのような人たちですか?
では、日本で年収1000万円を超えるような、トップクラスの料理人とはどのような人たちなのでしょうか?彼らは、普通のお店で働いている料理人とは少し違う、特別なキャリアを歩んでいることが多いのです 。
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海外で働く日本人シェフ(推定年収700万〜1,200万円くらい)
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東京の超高級店(銀座や青山など)の料理長(推定年収600万〜1,000万円くらい)
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自分のお店を大成功させたオーナーシェフ(年収は300万〜1,500万円以上と、お店の売上次第です!)
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ホテルの全てのレストランをまとめる総料理長(推定年収600万〜1,200万円くらい)
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SNSやテレビで有名な料理人(副業も合わせて、数百万〜数千万円稼ぐ人もいます)
下の表は、ここまでお話ししてきたお給料の話をまとめたものです。あなたが将来どこを目指すのか、考える時の参考にしてみてください。
表1:日本の料理人のお給料くらべてみました
まとめ:料理人の世界への第一歩
今回は、料理人という仕事のキャリアパスや年収といった、基本的ながら非常に重要なテーマについて見てきました。
料理人の道は一つではなく、大手ホテルで安定したキャリアを築く道もあれば、個人店で技術を磨き独立を目指す道、さらにはレストラン以外の場所で活躍する道など、多岐にわたることがお分かりいただけたかと思います。
また、年収は経験や働く場所、料理のジャンルによって大きく変わるという現実もあります。厳しい側面もありますが、海外で活躍したり、自分のお店を成功させたりすることで、大きな夢を掴むことも可能です。
さて、料理人の基本的な世界が見えてきたところで、次はその世界の「光と影」の、もう少し深い部分に踏み込んでみましょう。次の記事【第2章】では、料理人が直面するリアルな課題や労働環境、そしてテクノロジーが変える飲食業界の未来について、詳しく探っていきます。ぜひ続けてご覧ください。
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